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,エモノふってるのが、ほれぼれするくらいサマになってる。役立たずの重い鉄のカタマリがさ、ちゃんと剣になってんの。伝説のガードっての、うそじゃないんだなあ。ユウナもルールーもワッカも、キマリだってみんなそう思ってる。おれだってそう思う。剣ふってるあんたは、ずっとこうしてきたんだってわかる。時々してたおっかねえ目も、ごつい腕とか、動きとかも。ぜんぜん浮いてなくて。ここでこうやってると、それ、フツウだったんだって、わかる。

ここにいるのが本物で、じゃあ、ザナルカンドにいたあんたは誰だよって。ずっとあんたのこと、知りたいって思ってたのに、知ってみたら、ああ、やっぱりおれ、全然知らなかったんだなって。ひでえよなあ。なんか、いままでのシウチの中でさ、一番大ショックじゃん。わめいて、胸ぐらつかんで、それで大笑いされて。「ついてこい」って。むかつくじゃん。おれに選択肢、ねーっつーの。

そんだけなら、まだいいけどさ。親父のこと話してるあんた。なに嬉しそうな顔してんだよ。おれ、親父きらいなの、知ってんだろ?親父がなに言おうが関係ねえよ。ホントに同じこと言ったのかもしんないけどさ?おれはおれ、親父は親父。人が困ってたら助けようって、それって、あたりまえだと思うんだけどさ。
「自分のことが解決できないくせに、人のことに手をだす」
・・・昔のあんたの説教だったっけ。


宿の前にある海はすごくおだやかな夕日で、キーリカの血みたいに真っ赤な色じゃない。きれいだなってつぶやいたら、ユウナ、いつもこんな世界だったらいいのにねって言った。ユウナって、いつも思いつめたみたいな目してる。見つめられるとドキっとする。ザナルカンドの女の子より、ずっとオトナに見えるんだよな。・・・ショーカンシってなんだろ。時々、すごく必死な顔して、気になって、気になって。
ぼんやり考えてる最中に、ザナルカンドって名前、ユウナの口から出たら、たまらなくなった。やっぱり、おれ、帰りたい。家から見えるネオン。ブリッツの歓声。朝の海。そしたら、背中から追い打ちかけられた。

「勘違いするな、1000年前の遺跡だ」

だまって後ろで立ち聞きなんて、卑怯じゃねえ。いま、すげえヘコンでんだからさ。マジ、泣きたいんだからさ。あんたさあ。・・・どうせ、どうせ、あんたの故郷じゃないよ。あんたの故郷、ここだもんな。あんたにはわかんない。

泣きたくてたまんねえんだけど、泣くもんか。


ふてくされてんよな、われながら。こんな明るい時間から、屋根の下で、考える時間ばっかり増える。野宿で虫とか寒さとか気になってる方がまだ、間が持つって。背中からベッドに倒れ込むとポスっといい感触で。そういや、こんな柔らかいとこに寝るの、久しぶりだ。
ブリッツ。街。ネオン。友達。頭がホームシックモードからもどんねえの。
こういうふうにウツんなるのって、絶対アーロンのせいだよな。ああ、忘れてたもの、オチこむのなんか。びっくりしてさ。見るもの、聞くもの、なんでも初めてでさ。夢見てるみたいな感覚ばっかり。カルチャーショックってんの?けっこう、なんでも気にしない方だけど、さすがにこんなんじゃさ。おれって、実はホントにシンの毒気にやられたスか?、とかさ。
だから、・・・ルカで見つけて怒鳴ったら、もう足がたがたって力ぬけてた。アーロン、いれば、かえれるって。
『不満か・・・それとも不安か』
肩に置いた手がそのまんま、クシャって頭なでて、それで、もう、だめだった。

ふとんから飛び起きる。こうやってうろうろうろうろ考えてんの、超苦手だ。元凶、ぜったい、おっさんなんだからさ、行って、暴れて、あのぶすっとした顔、グーでなぐっちゃる、とか。


部屋に鍵かかってて、二倍むかつく。ガツガツとたたいたら、やっと開いた。腕組みして、扉のわきで、いつものコムズカシイ額にしわよせたくらいにしてさ。
その胸飛び込んで、ドカドカ拳でたたく。
「言いたいことがあるなら口で言え」
「きかねえじゃん!」
苦笑いするな。
ぐいっと、部屋の真ん中まで連れてかれる。よろけるっつーの。グリグリと厚い胸板に頭こすりつけた。また飲んでたんだろ?かすかに匂いがする。おれにとっては、酒の匂いって、『アーロンの匂い』で。それ、かいだら、またなんか、イライラしてきた。
「な、ザナルカンド探そう」
「・・・いずれたどりつく」
「だめだ、今すぐ。シン、探して」
遺跡じゃない、おれのザナルカンド。
「無理だ」
「かえろう、あんたとならなんとかなるって、かえろう」
「ユウナのガードは」
ああ、・・・わかってるっすよ。でも。
「いいよ・・・もう。ワッカだって、ルールーだって、キマリもいるし」
「本当にそう思っているのか」
「かえろうって!!」
胸、こぶしでたたきつづけながら首ふる。
「スピラで今までなにを見てきた」
「スピラの人間じゃねえもん!」
ああ、おれ、サイテーのこと言ってる。キーリカのバラバラんなった家とか、ユウナの悲しそうな顔とか、すごい勢いで頭ん中を走っていくのに、とめらんない。
「あんた、こっちに帰れてうれしいんだろ!だって・・・」

いきなりベットに放り投げられた。バネきいててはずんだけど。ばかやろって言う前に押さえつけられて、口ふさがれた。暴れてみたけどびくともしない。ずるいずるいずるい。こんなんでごまかすな。舌の動きとかエロくて、すぐ息あがって。ああ、ちくしょう。こっち来てから、サカってる余裕なかったの、恨む。
噛んでやる。アーロンが頭、ひく。その頬に力いっぱい。いい音した。・・・グーの予定だった。
「ばかにすんなっての」
おっさん、血管2、3本ぶち切れたらしい。表情変わる。マジキレのアーロンって、ほんと、おっかなくって、背中、ざわっとなって。でも、おれもひっこみつかないから本気で抵抗した。
蹴りいれようとした足首つかまれて引き倒される。
「・・・てっ!・・・」
壁にうった頭、そのまんまシーツに押しつけられる。
服なんか、簡単に、むしられる。やっぱ、かなわねえの。

指とかねじこまれて、イタイとかギャンギャン言ってもやめてくれない。なんか、そっちの方が、痛みよりこたえた。も、抵抗すんのもムナシイ。シーツに顔埋めたまんま悪態だけ繰り返す。チクショー、人さらい、バカ、変態。なに言ってんだか、めちゃめちゃ。ひきつれたまんま入られて、ガマンしてるとこ、むりやり動かされて、それなのに、体ばっかショージキで。息すすりながら、くやしくてなさけなくて、涙、出てくる。
キライだ。こんな、ゴーカンまがいも、旅も、スピラの誰だかわかんないあんたも、全部全部きらいだ。あんたが悪い。全部悪い。泣きながらずっとしゃべってた。今までたまってたドロドロしたもん、全部。嗚咽とか、スケベな声とか、喉にからんで、すげえカッコワルくて、情けなくて。それでも、全然とまんなくて。


「・・・帰してやることはできない」
骨きしむくらい、息とまりそうになるくらい力こめて、後ろからおれのこと抱いて。
「憎んで楽になるんなら憎んでいい」
「・・・んだよぉ」
答え、ちがう。
「ー・・・ロン」
それ、ちがうって。
「アーロン、・・・アーロン」
「おいてくればよかったか」
おれの髪の毛、グシャグシャに指でかきまわして、キスしてんだか噛みついていんのかわかんねえくらい、めちゃめちゃにして。
「ザナルカンドにおいて・・・ひとりで・・・」


突き上げられて、ガクガクゆさぶられて、どんどん壊れてく。腕とかすっぽぬけそうになって、きつく、きつく。まるで溺れかかってる人間同士みたいになって、爪、たてながらむしゃぶりついて。なんでそんな顔すんだよ、なんでなにも言わないんだよ・・・なんで。

いつもいつもあんたは黙る。全部、飲みこんで、全部、抱えて、なんにも言ってくれない。
それなのに、こんな、セックス。

おれも半泣きだけど、きっと、アーロンもそうで。しゃべんない分、泣かない分、よけいイタそうで。だから、おれ、今、アーロンの分まで叫んでる。


だるくてたまんない。
泣いたあとは、スウスウ気もちよくて、どうにでもシテヨって感じになる。冷たい布、目に押し当てられて、明日腫れると困るから、冷やせってことだろうけど。いまさら気遣いなんて、するなよな。それとも、それ、あんた流のわびってやつ。
・・・我が儘言ってわめくのは、いつもおれの方。コドモの相手、疲れてキレて、それで、おれはすっきりして、あんたはヘコんでさ。目、閉じて黙って横たわってると、アーロン隣に入ってきた。
横から手が伸びて、抱き込まれる。すぽっとおさまるんだよな。背丈ばっか伸びても、体の厚さとかぜんぜんおっつかねえの。
それからぽつッと、どうしたい、って聞かれた。どうするったって・・・ムリ、だって、他になんかセンタクシありますかぁ?おれ、とりあえず、笑ってみせて。やっぱ、あんたヒキョウ。あんなの言われたら、おれがヒクしかないじゃん。


眠たくて、半分ぼやけてる頭ん中で、おれ、ザナルカンドの家に帰ってた。ガランとした海、見ながら、ぼんやり座ってた。母さんが親父んこと待ってぼんやり海見てたみたいに。さびしくてさびしくてたまんなかった。もし、ここにいなかったら、おれ、そうやってずっと、アーロンのこと待ってたのかな。きっと、アーロンの中には『行かない』って選択はなかったんだろうから。

じゃあ、もう、いい。

となりのぶっとい腕一本、手探りで持ってきて、抱き枕にする。ザナルカンドでやってたみたいに。フウって息吐く、音が聞こえた。でも、黙って貸してくれた。もしかしたらいい夢、みれるかもしれない。
きっと、明日もさ、目が覚めたらあんた、知らんふりした誰かになってなんかむかつくこと言って。いいけどさ。

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