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どぼん



ついてこいだのしっかりしろだの言いたい放題。よくわかんね世界、わけ知り顔でさ、さりげなーく、しきってるし。なんなんだよ。えらそーなのは前からだとして、まわりもむかつくんだよな。まかせなさいとか、さすが、とか。


海ぎわで一休み。自分、さっさといこうって言ったくせに、足とめてさ。ま、ユウナ疲れてるからって理由はいいけどさ。いいけど。


夕日、すごくきれいだった。みんな、感動して水平線みてる。近くにちいさな桟橋があって、アーロン、一人だけ海の向こうに目、こらしていて。そっちに歩いていく途中、すごく似た景色、どっかでみたことあるんだっておもって、思い出したとたん、鼻がつんとした。おれの家じゃん。


突きだしたちっちゃな桟橋と。夕日見えるちょっと暗い色の海と。あんた、やっぱり海の向こうみてて。似てるのにここは家じゃない。あんたが連れてきた。知らないとこ。


鼻すすりたいの我慢していたら、アーロンふりかえって、おれの顔みてから、帰りたいかって、にやりと笑うんだ。


それきりアーロン、こっち向かないでまた海みていて、背中みてたら、むらむらむらっと、にくったらしくなって。体が先に動いてた。


クイック・アンド・アタック。
うおっと、めずらしいおっさんの叫び声。どぼんって派手な音たてて、二人で水ん中へ。
どうしたー!ってワッカの声。だいじょうぶっすよ。おれ、アヒルだもん。それよか、こっちのおじさん心配してよ。はは、あんた、泳ぐのだめだろ?たのしー。足の動き、おぼれてるんだかおよいでるんだか。なんとかかんとか桟橋の横木につかまってる。その下くぐって正面にぷかっと顔出してやった。すっげえ顔。おこれおこれ。もっとおこれ。拳つきだしてくるけどかわして、指でっぽうで水かけ攻撃。


「・・・落ちた」
「あ?ああ」
サングラスね。


水面けって、白い砂んとこに降りていく。波の音も誰かがよんでるのも、みんなくぐもって遠くなっていく。


腹たてるのは、たぶん。なんだかあんたもこっちの人で。帰りたがってんの、おれだけで。


ゆらゆらゆれながら沈んでくサングラス握って上へ浮かぶ。泳いで桟橋のかげ、はいるとアーロン、黙っておれの顔みてるんだけど、もう、怒っていなくて。おれ、なんか言ってからかってやろうとか思ってたんだけど、アーロン、なんか考えこんでいるみたいな、へんに真剣な顔をしていたから、何も言えなくなって、黙ってサングラス差し出した。
目が、息つまる感じがしたから。


上からのぞかれるとやばいって思ったけど、なんだか、急にすごく不安でたまんなくなって。
だから、キスした。
しょっぱくて冷たい。


上から足音聞こえたから、体はなして、そばすりぬける。横木に手かけると、声追いかけてきた。


「悪かった」
「なにが」
「笑って」
「あたりまえだ」


鉄棒の要領で体ひきあげる。よっ、て手、あげて。あれ、ワッカ、なに、口あけてんのさ?
「アーロンさん・・・突き落とした・・・」
後ろから、ルールーが、あんた、本当にこわいものしらずねって。
アーロン「さん」って、誰?それ。しらねっすよ。




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