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ひとり

ひとりだっていいんだ。あんたなんかいらない。おれ、もう餓鬼じゃねえもん。いなくったって平気だって。ちゃんと飯食って寝て起きて体動かして、それだけでちゃんと毎日やってけるって。

強がってさ。いろいろやってみるんだ。ほかにぬくいとこ探してみよっかな、とか。めちゃめちゃに体動かしてみればいいかな、とか。けどさ。調子全然もどんなくてさ。あの時、わあわあわめいた時に、なんかをいっぱい吐き出して、今、おれカラッポ。そのまんまとんずらされたし。で、戻って来ないし。
全部、全部あんたが悪い。

今日だってちらちらと集中力欠如。腹立つ。無駄なのにさ。わかってんだよ。水の中から観客席、見えるわけないし。スカッたボールとられて、あー、やっちまった。ブーイングとヤジの嵐。

カミナリ落とされてカツ入れられて、ついでに悩みでもあるかとかなんとか、それがマニュアル通りのカウンセリングでさ。笑っちゃうのはおれだけじゃないんで。バックスもフォワードも笑い必死で押さえていたみたいで。カントクいなくなったとたんにパカパカなぐられたりクビしめられたり。いてて。いたいっす。もういいっす。元気でたっす。センパイ、やめてー。みんな、ごめんな?期待の星であるところの、ジェクトさんちのお坊ちゃんはめっきりスランプです。オトコにフラれてやさぐれてます、・・・うわっサイテー。

気持ち切り替えて休養しろとのお達しで、次はベンチか・・・、はあ、ってナマ返事かえして。なんか、もうやる気なくて。来週の試合スケジュール、ながめるだけながめていたら、そっか、あさって、命日だった。

母さんの眠っている石の上には母さんの名前だけぽつんと書いてある。母さん、クソ親父の墓、絶対作るなって言ってた。生きてるって信じていたら、なんで自分、死んじゃうんだよ。おれじゃ足りなかったんだ。オヤジの代わりに、ならなかったんだ。それってひどいよ。コドモよりオトコ選ぶなよ。
花わざわざ買っていったのに、もう、白い花が置いてあった。ここにおいていくの、一人しか知らない。しばらくおれ、ぼけっと、それながめてた。
「ばーか・・・」
消えるならきれいに消えてくれよ。足跡残していくなんて、まぬけじゃねえ?
今日は風が強くて、花も寒そうにゆれてる。上見たら空がぬけるように青くて、喉つまる感じ、またぶりかえした。

家帰ってドア開けて。カラ弁当とか転がってるのゴミ箱に突っ込んで。なんか動く気力なくてそのまんま布団の上に体投げ出す。テレビつけてみるけど、ケタケタうるさくて、また消して。結局電気つけないで真っ暗なまま寝てた。
波の音がすごく近い。
そういえば、親父よくおれから母さんとりあげてさ、ふらっと桟橋に散歩しに行ってた。きっと、おれ、ひとりに弱いの、そのせいだ。今日は母さんのことばかり思い出す。おれ、母さんのことちょっとだけうらんでいるけど、さびしくて死んじゃう気持ちはわかる。

だめになんかならないはずなんだ。仲間、いるし、友達、いるし。でも、本当に欲しいもの、わかっちまったらもう、だめだ。おれ、ゴーヨクなんで。

夢の中でちっちゃなコドモになって泣いていた。どこかわからない場所で、暗くて、不安だったんだ。そうしたら、誰かが頭なでてくれて。下向いたままだけれど、誰だかわかる。おれの好きなでっかい手が、同じリズムで。うん、あんたがそこにいないと、だめになる。
夢から半分さめかけて、ずっと頭なでてる手、本物らしいことに気づく。いつのまにかベットのわき、重さで沈んでいた。背中ごしに重い気配とか匂いとか伝わってきて。
「きらいだ」
頭なでる手がとまる。おれ、また鼻すすりあげて。
「だいっきらいだ」
シーツがずれて、アーロンが動いたのわかる。おれは息つめてて。
「なんで・・・来るんだよ」
「試合、見た」
「そ」
なんだ、見にきてたんだ。ずるい。こっちは見えねえで、そっちは見てたなんて。その派手な赤い服。絶対目立つと思ってたのに。
「ひどいな」
「あんたのせいだ」
アーロン、また黙ってる。おれ、それでも、ああ、アーロン帰ってきたんだ、ちゃんといるんだって、なんか体中の力ぬけて、ついでにバケツの底も抜けて、涙としゃくりあげとまんねえの。夢の続きで、おれ、まだガキの、まんまで。

後ろの重み、動いた。またどっか行くのかよって、夢中でふりむいた。そしたら、すごく近いところで息づかい、聞こえて。アーロン、おれの上にかぶさっていた。

髪の中に指さしこまれて、何度もすかれる。耳の後ろのとこ、かく。犬にするみたいに。あごの形とか、確かめるみたいになでていく。今までそういうふうな、なでられ方されたこと、一度もない。それから口のところに指先がきて、ゆっくりなぞられた。ほとんど力入っていない、触るか、触らないかくらいで。
おれの大好きな手。

つかんで、口元に押しつける。口、少しだけ開いてみて、関節のところ、はさんでみる。間違って、ないよな?逃げないの確かめて。それから、思い切って、口の中に入れる。
指、動いて、柔らかいとこ、探られる。舌とか、歯茎と唇の間とか。目、閉じて舌動かして追いかける。平気だから。けっこうエロいッしょ、おれ。もっと好きにしたって平気だからさ。

かぶさってた体、動いて、背中に手、まわされる。指突っ込まれたまんまひきよせられて、ぎゅっと。なつかしい重さ。うん、こうして欲しかったんだ。背中、広くて手がまわらない。手のひらでなでまわす。
指、引き抜かれて、濡れた先が、顎におりていく。口がさびしくて、名前をよんだ。
「アーロン・・・」
低い声が帰ってくる。やめられないぞって。それが、少しうわずっていてゾクッとくる。欲情した男の声になってた。初めて、聞いた。返事の代わりに、暗闇の中、手をのばしてみる。ほおの傷が指先にさわる。こんなに、こそげて。痛かっただろ?目、一つ、どっかに落としてさ。
ひきよせた頭が落ちてきて、肩にうまる。くすぐったい。髭、あたる。なんか、変なカンジだ。それからだんだんずれてきて、口にたどりつく。あ・・・マジ?あんた、キスうまい。頭の後ろまでしゃぶられちゃうってカンジの。口ん中だけじゃなくて、下唇とか、あご先とかも食べられてく。

お互い一時もじっとしていない。口で、手のひらで、足で、もっと近くに、ぴったり、ぎゅっと。二人ともとっくに息はねあがってきて。腿をさする両手が気持ちいい。下にそろそろと手、のばすと、あんたもおれのこと、欲しがってるのわかった。ゾクゾクして、服の上から指でこわごわなぞってみる。服、じゃまだ。もっとくっつこう?襟元に手を差し込んではだけると、それが合図だったみたいに、全部ひっぺがされる。もちろん、おれも、そうしたけれど。

濡れた舌先で胸、つつきまわされて、やらしい声あげて。体中ベタベタで、どっか溶けてなくなってるかもしれない。あんたにも、気持ちよくなって欲しいよ。だから、これ、ちょーだい。手に持った熱い固まり、しごいて、ねだる。あてがわれただけで、ブルッと震えはしって。

気づかいみたいなの見えたの、最初だけで、あとはもう。腹の中、めちゃめちゃにかきまわされて、ひきずられる。あんた、ケダモノみたいにガツガツしてる。ああ、ゾクゾクとまんない。気持ちいい。おれだって。欲しくて、欲しくてたまんなかった。一緒にさ、ドウブツなろう。ハズカシイとか、なんかにキガネ、とか、どっかおいて・・・さ。腰の骨つかまれて、思いっきりゆすられて、たまんない。すげ、いい。もっと。

イッちゃって、荒い息吐いて、あんたも重い体、おれの胸にぐったり投げ出してくる。しばらく、ブリッツハーフタイム息つぎなしの後みたいに、空気むさぼってた。
かすかに身じろぎして、体抜き出そうとするから、もったいなくて、腰に足まわしてひきとめてみる。肩にキスすると、塩っぽい味した。抱えられて横にずらされる。いつのまにか月が傾いていて、やっとアーロンの顔が見えた。熱ひいて、おだやかな顔。照れくさいから目、はずすと、頭なでられた。
「あのさ」
「ん」
「気持ちよかった」
そう言ったら、少し渋い顔して。いまさらじゃん。もう一回、しよ。頭ひきよせて耳元で言ってみる。腿で脇腹さすりながら塩っぽい体舐めていくと、体の中にはいっているの、ビクッと大きくなる。なんだ、あんたも元気じゃん。エッチい笑いうかんじゃう。そしたら、あんたも喉ならして笑ってた。


広い胸に背中あずけて、つながったままで、ゆっくり息をした。もう、あんたの触っていないとこ、どこにもなくて。それでも手は止まらない。ぐったりしてんだけど、すげ、満たされてて、ぼーっと体あずけてるだけ。思い出したように時々快感、つきあげてきて、息、すすりあげてしまう。
「もう、泣くな」
涙なんて、うれしくたって、でる。

あのさ、おれがさ、思いっきり、泣いたり、笑ったりできるとこだからさ。だから、ここ、あけておいてくれないかな。

ひとり、もう、だめだからさ。





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