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静かに

みんなの寝息確かめてから抜け出す。たき火のパチパチはぜる音が背中ごしに遠くなる。どんどん暗くなる。草がさがさいう音ころして、すげ、スリルで、バクバクして。それとも、ワクワクしてるのかな。わかんねえ。後ろめたいってのもけっこういっぱいめに入っているかも。
そこらじゅうの岩がホタルみたいな光で光ってて、どこかで鈴みたいに虫が鳴いてて。湖の岸の太い木の幹にもたれていつもどおり剣かかえて。そんなカッコでもちゃんと眠れるっつうのも、すごいっすね。うん、眠りがすごく浅いんだよな。そうやって、守ってきたんだよな。おれたち、とか、オヤジたち、とか。足音どんなにころしていっても、まっすぐおれのこと見あげる。暗いとこで見るとあんたの目っていつもの赤かかって血みたいな色じゃなくて、底なしの色になってる。なにしにきた、なんていわせない。言う前に、口ふさぐ。

性悪の餓鬼の重さって、あんたには重荷かもしんないんだけど。

服とかも最小限しか脱がさないで、ちょっとマオトコ状態だよな。笑っちまう。こんなのどこでおぼえたんすかぁ?あんたさ。外ですんの、慣れてんの。そーゆうの、あんた似合わないしさ。どしっとした腿にまたがって背中に手まわしながら、あんたのが入ってくるまで息つめてまってて。こういうときにかぎってさ、風ひとつふかねえの。どんなにつめてても破れちまう息とか、服すれる音とか、だんだんどうしたって湿っぽい作業なっちゃう、いろんな音とか。ぐいぐいあんたのことひきよせて、服の端とか噛みながら、もう、早くおわれーって…でも、やっぱおわってほしくなくてさ…。あはは、ムジュンしてるよなあ。時間、ないから、さ。おれにも、あんたにも、もう。

背中を走る熱さにゾクゾクしながらあんたの深いためいきを聞いた。この声さあ、好きだったんだ。覚えてもってきたいけど、無理かもしんない。こんな真っ最中にさ、頭の芯がどっか冷たくて、それは、もしかしたらあんたもそうかもしれないけど。

体離したら腹とか胸とか服、ぐしゃぐしゃで、どんどん冷えていく。ほんとは、立つのもおっくうなんだけど。
『じゃあ』
空気のすれる音にしかならなかったけど、あんたの顔が静かに動く。底なしの目が見上げてる。

たき火の音が近くなる。また明日になる。みんなと一緒で、あんたはあんたにもどって。おれもさ、おれのふりして。そうぞうしく騒いでさ、時間がまだ、あるふりして。


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