酔夢

潮の匂いを肴に酒杯を傾ける。月が海を照らす夜は、酒の香を愛した友の思い出に会いたくなる。
もう一人いるのを忘れていたわけではないが。放っておかれるのが大嫌いな家主は、おれの分はと、とんでもないことを。
生意気にも唇をすぼめてチュッとすすりこむのでとりあげる。
「ケチ」
「もう3年待て」
「やだね」
酒の味などわかるものかと言えば、わかるさと口をとがらせる。血はあらそえないものだと苦笑する。
「笑うな」
ぶすっとふくれるあたりはいつまでも子供のままだ。
取り戻した杯に澄んだ酒をついであおると、首の後ろに柔らかい髪がのせられる。首を曲げると犬が顔をよせるように吸いついてきた。
隙間をこじいって、柔らかい肉が口腔を舐め探る。長い時間、ゆっくりと味わうように動き続ける。
「辛い」
口の端ちらりと舌をひらめかせて舐めとる。いつのまにこんなに性悪になったやら。見る間に膝の上に馬乗りに飛び乗ってきた。
もう一度口の中に舌を滑り込ませながら、手がかなりあやしげなところを這い回る。もう、これだ。
「しよう?」
悪戯小僧の顔のままだ。
「あんたが酔いつぶれてたたなくなる前にさ?」
することも言うことも直情なくせに、手つきはまだ稚拙で、その落差がまた。
片手で背を支えて抱き上げると笑いながら首に腰に手足をまわしてしがみついてくる。
くらりとまわるのは酒なのか。


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