沈黙

黙って耐えている。沈み込んでいるのを誰にも悟られないように。そんなことは、この子供には無理なのだ。上手につくろおうとして、笑顔が不自然に貼りついている。
背中からただ見守り続ける。自分で歩かせようと決めた。歩き続ける子供の痛みが己を貫く。目を閉じてその手を引き寄せたい誘惑に逆らい続け、延々と血を流し続ける。
歩けなくなりそうになると、子供はそばに来る。
指が目元の傷をなでる。
それから、目をあげて、死ぬの、どういう気分、と聞いた。痛かったんだろ、こんな傷できてるし。とつとつと平坦な、感情を抑えた声で言葉は綴られていく。自分が消えるってどういう感じ。
「おれ、ユウナみたいに覚悟、できない」
微かに声が震えている。だが、そのまま、凪の海のように。
「がんばってみたけどさ」
どんな答えで子供が安心するのか、彼には思いつくことができない。いつも通りの沈黙を返すだけだ。
触ってやる。言葉で伝えることなどできないだろう。だから、髪のひとつひとつ、指先まで全部、貪ってやる。
喉が枯れるほど叫ばせて、それから、子供はやっと泣き出す。


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